最近Gnutellaというソフトが話題になっている。これはとても面白いシステムだ。
簡単に説明するとGnutellaはWebクライアントとWebサーバーを組み合わせたソフトだ。
ソフトをたちあげるとインターフェイスがでてくるが、その裏で自動的にWebサーバ
としての機能もたちあがる。その結果サーバを介さずにクライアントマシン間のpeer
to peer 接続で転送できる。
これだけならばすでにこういうソフトはあったと思う。Gnutellaはこれに検索機能を
くみあわせた。機能はファイルを転送すること、検索することに限られている。転送
はHTTPで行う。鍵となるのは検索の仕組みを組み合わせたところだ。
検索といってもファイル名の検索だけに限っている。ある検索キーワードが入力され
ると、それをGnutella間(Gnutella-net)で順に回していく。それぞれのクライアント
でサーチがかかり、そのマシンにそのファイル名のファイルがあれば、そこにあるぞ
と返す。ここでまったくメインとなるサーバがない点が重要。クライアントからクラ
イアントへ順に接続していくという仕組みだけだ。
Gnutellaのアイデアの元になったNapsterというソフトは音楽コミュニティ構築のた
めのソフトとして開始された。しかしこちらのソフトは中心となるサーバという概念
が少し残されていた。なので中心が潰されてしまえば情報交換できなくなる。しかし
Gnutellaはそうはなりえない。
●the end of server
Gnutellaは、Webの誕生以来ようやくでた新しいネットワーク構造を持ったシステム
だと思う。このシステムのもっともすごいところは、serverという概念を崩す可能性
を秘めているところだ。
いままでのWebというものも、それ以外のネットワークベースのシステムも、意識さ
せられていなかったかもしれないが、そこにserverという重要な概念がある。
Gnutellaのもっともすごい点は、そのシステム構造の中にserverという概念が無いと
ころだ。
Webを越えると宣伝された新技術はたくさんある。例えばプッシュ。その最期を覚え
ているだろうか。RTSPというプロトコルはRealTimeといっても単にUDPにタイムスタ
ンプを付けただけだった。Gnutellaはたしかに構造として新しい仕組みを提供してる
と言える。
これはserverという概念の崩壊の始まりだ。どれだけの影響があるのか想像できない。
まずドメイン名というものに依拠している全てのビジネスモデルの価値が減ずる。そ
れが始まりにすぎない。サーバマシンビジネスや、レンタルサーバビジネス、大手顧
客に限ったISP、backbone、など全てに影響がおよぶ。
Mosaicを最初に見たとき、これは成功するだろうと思った。おそらく全ての大学がこ
のシステムを標準として採用するだろう、くらいのことを考えた。この見積りがまっ
たく甘かったことを、今もよく覚えている。
●killer contents for broadband
広帯域ネットワークについてみんな語っている。広帯域ネットワークを家庭までひけ
ば、多チャンネルのテレビが見られるようになるとか、商取引ができるようになると
か。しかしそのために広帯域ネットワークをひきたいと思うだろうか。
全体的な方向が広帯域ネットワークに向かっているのはたしかだろう。しかしその環
境でどのような変化が起るか、なにがそれを駆動する力になるか、つまりキラーコン
テンツがどんなものになりうるかをずっと考えてきた。もし自宅がインターネットに
100Mbpsでつながったらどんなことができるか? どんなうれしいことが起こりえるの
か? ずっと考えてきたが、答えがない。つまり広帯域でつながってもうれしくなるよ
うな仕組みが思いつかなかったのだ。しかしGnutella的構造こそがその解だと思う。
情報受信だけしていても、広帯域を使いきることはできない。ところが対称的に、情
報発信側はいくら帯域があっても足りない。このアンバランスをきちんととらえ、
そして反転させればよい。つまり情報発信でも受信でもありうるシステムこそが、
広帯域におけるキラーコンテンツだ。
物理的な距離的に近い物同士が情報を融通しあうシステムができるだろう。例えてい
うなら、醤油がたりないからちょっとお隣から借りてくる、みたいなシステム。
アジア的情報交流の復権、そうとらえることもできるのではないだろうか。
●アジア的なネットワーク構造
磯崎新「海市」のシンポジウムで、そこに情報ネットワークをどう組み込むかについ
ての浅田彰の発言が面白かった。従来のマクルーハン的な文脈は、人里離れた湖畔か
どこかに小屋をたてて一人で住み、そこにパラボラアンテナなどで通信経路を作り、
孤立して生活しながらも情報で世界をつながっているというモデルだった。しかし他
方、アジア的な密集した生活モデルもまだまだ存在する。こちらはずっと情報化され
ないままだった。こういった文脈でも有効な情報経路のありかたを考えるべきなんじゃ
ないだろうか。例えば人が集まる店の片隅に情報端末がおかれ、使うときには自分の
ICカードをさしこみ、使用する。(うろ覚えだがこんな感じだった。)
とても面白いと思ったのだが、ここではネットワーク上での情報そのもの構造につい
ての視点はない。ここでGnutella的構造がその情報構造を提供しうるのではないだろ
うか。つまりGnutella的構造こそがアジア的な情報ネットワーク構造であると。
●possibility
技術的にもシステム的にも洗練されてない面があるが、根本となるコンセプト部分は
面白い。使える。
まず検索をファイル名検索だけに限っているが、これをもっと複雑化する手がある。
クライアント的機能をファイルダウンロードに限っているが、いわゆるHTMLのブラウ
ザ機能を内蔵する利点もあるはずだ。
ネットワーク構造も、サーバにぶらさがる構造とpeer to peer構造のハイブリッドに
する手がある。
一般的なWebブラウザと共同で働き、Webブラウザの欠点を補完する方向に進化させる
こともできる。たとえば、あるWebサーバからページの階層構造を落してくる機能を
組み合わせて、そのファイル構造を作っておく。そうすると、ある特定のWebサーバ
のミラーリングを自動的に広めていく仕組みも作れる。
まず中心となるサーバがある。
各自は自分のHDDにそのサーバを階層構造ごと、まるごと転送する。バックアップ。
中心となるサーバにアクセスできなかったとき、Gnutella-netに自動的に移行する。
そのサーバのバックアップがあるかをqueryする。
もしあれば、そちらからもってくる。
こうすれば、自動的で大規模なミラー構造のようなものを実現できるだろう。
たとえばその中心がなんらかの理由で落されたり、パージされたりしても、
その名前そのものはGnutella-netの中でvirtualにいきのこって、
あるサーバを消すことが不可能になる、、、など。
つまり、消去不可能なWebサーバを実現させられる可能性がある。
●reviews:
http://www.zdnet.co.jp/zdii/0005/10/an_001.html
http://www.zdnet.co.jp/zdii/0005/10/an_002.html
IT業界全体への影響について論じている。すごく正しい。
Napsterについての記事だが、実体としてはGnutellaについての記事。
http://www.zdnet.co.jp/news/0004/24/berst.html
http://www.zdnet.co.jp/news/0004/24/arnold.html
二つの解説記事。どちらも的を得ている。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/articles/A21559-2000May17.html
"It changes the Internet in a way that it hasn't changed since the browser," Andreessen said.
まったく正しい。
http://www.watch.impress.co.jp/internet/www/yajiuma/backno/200005/2.htm#19b
たしかに毎日新聞の記事はメチャクチャかもしれない。
しかし『「Gnutella」は間違っても「Yahoo!いらず」にはならん。』はどうか。
この筆者はなぜYahoo!が大きな存在になったのかを理解していない。
中途半端にインターネットを知っている人の典型的な反応といえる。
●links:
Gnutella download
http://gnutella.wego.com/
http://listen.to/gnutella
http://www.zeropaid.com/downloads/gnuservers.shtml
Third Party software
http://nostromo.ikasths.dk/dnet/
http://www.zeropaid.com/downloads/gnuclones.shtml