クジラの歌については、
・ロジャーペイン、宮本貞雄+松平頼暁訳「クジラたちの唄」青土社、1997.
が面白い。付録に海洋音響学入門もついている。
ナガスクジラは155dbの20Hzというほぼ純音を出す。また、海底約1260mの深さで発っ
せられた音は、上下に反射し横方向にだけ広がるという性質を示す。これを音路
(Sound Channel)と呼んでいる。これを組み合わせると、ナガスクジラの声は数万Km
まで進む可能性がある、という仮説。
このSound Channelについては、NHKスペシャル「海」のクジラの回で扱っていた。
いわゆるザトウクジラの唄はそれほど低音でも深海でもないので、これほどの距離は
届かないのでは。
イルカの鳴き声については、
・赤松友成「イルカはなぜ鳴くのか」文一総合出版、ISBN4-8299-3047-0
http://www.nrife.affrc.go.jp/akamatsu/books.html
このページから、イルカの声、クジラの唄も聞けます。
http://www.nrife.affrc.go.jp/akamatsu/homepage.html
榊原さんの読書日記。
http://www.brl.ntt.co.jp/people/kis/personal/books/reviews.html
Sound Explorerというサイトから、下田のイルカの声をリアルタイムで聞けるはず。
が、僕のPCからはエラーがでて聞けなかった。
http://www.soundx.net/
http://www.soundx.net/mail/05yamamoto.asp
●Sound Channelの仕組みについて
海水は深くなるほど水温が下っていく。ハワイ沖のような暖かいところだと水深
1260mくらいで0℃近くになる。しかしそれ以上深くなっても0℃以下になることはな
い。しかし水圧は、水深が深くなればばなるほど高くなっていく。
音が水の中を進む速度は、水温が暖いと速くなり、また水圧が高くても速くなる。こ
のように違う媒体の中を波が進むと、屈折する。つまり海面のほうに向かった音は、
曲って下のほうへと戻っていく。またある程度より下は水圧が増すため、下方向に向
かう音は上方向に戻ってくる。このようにして、音は上下に反射し横方向にだけ広が
ることになる。正確にはひらべったい円筒形、レコード盤のような形に広がる。
(ロジャー・ペイン「クジラの唄」付録:海洋音響学入門を参考にした)
以上のことは、次のような実験で確かめられた。
「オーストラリアの海中で120Kgのダイナマイトを爆発させたところ、その爆発音は
大西洋を北上し、およそ4時間で遠く離れたカリブ海まで伝わることが確かめられま
した。その距離およそ2万Km。地球の反対側にまで音が届くのです。」
「深いところではおよそ1000m、浅いところで100mの付近に音を遠くまで伝える層が
広がってることがわかったのです。」
(NHKスペシャル 海・知られざる世界(5)「クジラだけが知っている」より引用)
ロジャー・ペインは同じ本の中で、このようにしてザトウクジラの唄は海の端から端
まで届くと書いているが、僕はこれは誇張だと思う。ザトウクジラの唄は20Hzといっ
た低音ではなく、人間が普通に唄として聞こえる音域だから、その唄のほとんどの部
分は消えてしまい低音部分だけしか聞こえないだろう。低音部分だけでも、自分がこ
こにいるという情報は伝えられるのかな。まさしくお互いにpingをうってるみたいな
状況になるのかも。
ロジャー・ペインの本を読んでいて、ザトウクジラの唄の面白さは、どんどん変化し
ていくところにあると思った。まずザトウクジラの唄は、韻を踏んだりといった複雑
な構造を持っている。そしてその唄は少しづつ変わっていって、毎年新しい唄ができ、
ある海域にいるザトウクジラはみなその唄を歌うようになる。毎年唄は変わっていっ
て、過去40年間の記録を録っているが、同じ曲がくりかえされることはないとのこと。
どのように変わっていくのか、ちょっと引用してみる。
「ザトウクジラは大がかりな作曲の法則に沿って唄を作っており、これと同じような
法則にしたがって作曲する人間ならこれを「音楽的な約束事」と呼ぶだろう。これらの
法則は、どのようなことをクジラが各自受け入れることができるかを狭義に限定して
いる。ザトウクジラは新しいフレーズを作った当初は非常に早くそれを唄うが、時を
経るにつれてそれがたんだんゆっくりとなり、最後にはそれを全く唄わなくなり、そ
のフレーズ、またはその唄の他の部分をもとに作られた新たなフレーズがそれに取っ
て代わる。変更を加えるもととなった素材は既存の素材を装飾したものである。
私は鯨類保護研究所(さ富市。旨港さき0コヲ凶二e@ で長年に亘りクジラの唄を研究
してきたが、新しい唄の要素が突然入ったと思われるのを聞いたのは一度だけである。
それでも二週間に亘って誰も録音を行っていなかった期間にこの変化が起きたため、
徐々に変化した可能性も否定できない。ザトウクジラが唄の中で韻を踏んでいるとい
うのは、近年の発見の小で最も興味深いものの一つだと私は思う。この発見は、リン
ダ・ギニーとケイティ・ベインによるもの。
対句の場合、変化は詩の慣例にしたがって行われるが、クジラは唄っているのであっ
て、話しているのではない。クジラの唄に下降するポルタメントが含まれていると、
だんだんとその部分がゆっくりと唄われるようになり、最終的には下降する音符にはっ
きりと分かれてゆく。さらに時間が経過すると、これらの音符の一部が飛ばされ、半
音階のポルタメントだったものが三度音をもとにした四つの音符からなる下降アルペ
ジオへと変化する。それからアルペジオの中間の音を飛ばし、下降する一オクターブ
のジャンプに変える。そして今度は最初の音をニつにし、次の音を三つにし、最後に
ハミングを加える。そのうちこのハミングがだんだん大きくなり、最初の音を出す前
にこれを何度も繰り返すようになる。最初は下降するポルタメントだったものが、い
つのまにか二つの短い音とそれより一オクターブ低い三つの短い音、そして数回のハ
ミングへと変化しているのである。関係がないように見えるが、このプロセスを調べ
ることによってどのような経過を経て変化してゆくかを理解することができる。変化
のプロセスが完了するまでには一ヶ月から数年を要する。だが、それは非常に簡単な
ルールにしたがっており、中間にある段階がすべて含まれていることがわかっている。」
(ロジャー・ペイン「クジラの唄」pp.159より引用)
僕はこの話を聞いて、このように変化していく唄がとびかうような空間をインターネッ
トの上に作りたいと思った。それが「SoundCreatures」という作品のきっかけになっ
た。実はまだ実際にはこのように変化していくクジラの唄そのものは聞いてみたこと
はなく、機会があればオリジナルの録音を聞いてみたいと思っている。
イルカの鳴き声は唄といえるような複雑な構造をそなえてるわけではないので、あま
り興味がなかった。音はまずエコロケーションとして使っている。しかしイルカは同
じ音を魚を気絶させるのに使っているようだ。ひたいのところにあるメロン体で音を
集中させ、魚に向かって発っして、魚がしびれて動けなくなったところをパクッと食
べる。ICCのサウンドアート展で物理現象としての音を体感させるというコンセプト
の作品があったが、物理現象というならこのくらいやってほしいよなと思った。
NHKスペシャル 海 クジラ
http://www2.tokai.or.jp/BLUEWHALE-AI./naijisetumei.htm
http://venus.iulnet.ne.jp/~science/books/
クリストファー・クラーク コーネル
http://sound.media.mit.edu/~kdm/
http://www.brl.ntt.co.jp/people/kashino/
http://www.nrife.affrc.go.jp/akamatsu/homepage.html
http://www.nrife.affrc.go.jp/akamatsu/sound.html
ザトウクジラのソング*4 803kB 大きいファイルです
ザトウクジラ ソング
http://www.ifnet.or.jp/~xxxs/SAS/music.html
ドルフィン・スイム http://www.netlaputa.ne.jp/~shuchan/scuba/oga-9804/oga9804.html
http://www.ryukyu.ne.jp/~kun/whale/rule.html
●http://www.ifnet.or.jp/~xxxs/SAS/music.html
●http://www.nrife.affrc.go.jp/akamatsu/intro.html
http://www.nrife.affrc.go.jp/akamatsu/sound.html
関係ページリスト http://www.nrife.affrc.go.jp/akamatsu/links.html
humpback whale song http://www.design.net.au/newworld/nature.htm